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2013年9月22日日曜日

速く歩くこと

私は昔から速く歩くことが好きで、おそらく、中学生のころに読んだ司馬遼太郎の小説「竜馬がゆく」の影響なのだと思う。全八巻のこの小説の、八巻の終わりのほうで、薩長同盟を既にやり終えた竜馬が、大政奉還という最後の仕事を仕上げるために、越前福井に向かってひたすら歩いて行くシーンがある。あくまで小説上の「竜馬」である(小説であることを示すために、史実上の「龍馬」とは字を違えてあると読んだことがある)。

司馬遼太郎は、いわゆる奇説のたぐいを採らない。あらゆる文献、資料にあたり、あくまで「通説」の上に豊かな人物像を描き出す。読んでいるうちに、その人物に実際どれほど身近にいた人よりも、自分のほうがその人物を知っているような錯覚すら感じる。そして、歴史上有名な人物、あるいは重要な役割を果たした人物であっても、司馬遼太郎はそれを、魅力と同時に人間的欠陥に満ちあふれた人物として描き出す。そこに人間世界、歴史というものの面白さがあるのだと感じた。

司馬遼太郎が描き出す竜馬の人物像は、当時中学生の私にはすごく魅力的だった。天から与えられた使命を、天命を果たすために歩き続けるような人生、どうせ生きるならそんな人生が良いと思っていた。天命というと大げさだが、一人ひとりの人生に与えられた課題のようなものはあるのだと、今でも思っている。

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