パリ協定発効により、クルマ産業はEV(電気自動車)の方向に舵を切ろうとしている。特にヨーロッパでその傾向が加速しているようだ。モータースポーツにおいても、EVのフォーミュラレースであるフォーミュラEにメーカーの関心も移りつつある。
フォーミュラEの技術動向は非常に興味深いし、それ以上にドライバーの技量の競争レースとしても悪くない。モータースポーツというよりはオリンピックの競技でも見ているような感覚もある。これからさらに発展していくことを望みたい。
しかしながら、昔ながらのエンジン音を響かせるモータースポーツの魅力もやはり捨てがたい。F1もメルセデス1強の情勢は2016年も変わらなかったが、それでもレギュレーションに対するアプローチがこなれてきて、今年は面白いレースが多かった。来シーズンは空力と車体のレギュレーションが大きく変わるので、その変化に早く対応できるチームが優位に立つことが予想され、面白いシーズンになるのではないかと期待している。
そして、モータースポーツの魅力の一つであるエンジン音については、ハイブリッドV6ターボになって以来、迫力がなくなったことはFIAでも意識しており、2016年はウェイストゲートを通過した排気専用の独立したテールパイプを設けることが義務づけられ、若干の変化はあった。
排気ガスの持つエネルギーを過給に使うのみならず効率よく回生するハイブリッドであるから、エネルギーを吸い取られた排気の「音量」が小さくなるのは仕方がないことだが、「音質」もっと端的に言えば「音の高さ」を改善することは難しくないのではないかと、私は考えている。
というのは、今のV6エンジンのバンク角はレギュレーションで90度と決められている。レーシングエンジンの場合、オフセットクランクはメリットがないため、結果的に90度―150度―90度―150度・・・を繰り返す不等間隔爆発となっている。つまり排気音の音程を決める排気音の周期は3気筒と同じになる。これを、等間隔爆発をレギュレーションで義務づければ、MGU-Hの規定等は現状と同じで良い。一つのタービンに6つの等間隔爆発のシリンダーから排気が流れ込めば、今より1オクターブ上の甲高い排気音になるはずだ。
かつて澄み切った甲高い排気音を響かせていたフェラーリやホンダのV12エンジンは、バンク角の関係で、実は12気筒が等間隔爆発していたわけではなく、排気音の音程を決定する音の周期は等間隔爆発の6気筒と同じだった。つまり、V6エンジンだって等間隔爆発を義務づければ、かつてのホンダやフェラーリと同じ甲高い音になるのだ。ただし、今のターボV6はかつての自然吸気V12ほど高回転まで使わないから、まったく同じというわけにはいかないが。
仮に現状のレギュレーションに、等間隔爆発の義務付けを盛り込んで、バンク角を自由にしても、おそらく多くのエンジンコンストラクターは90度近辺のバンク角として、30度近辺のオフセットクランクを使うのではないか。これは技術的にそれほど難しくないし、市販車のV6エンジンはたいてい等間隔爆発を使うので、市販車への技術的フィードバックもより大きくなるのではないかと思うのだが、いかがだろうか?
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