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2021年6月7日月曜日

カスピ海の怪物~旧ソビエトのグラウンドエフェクト機

カスピ海西岸アゼルバイジャンの首都バクーで行われたF-1アゼルバイジャンGP。
先月のモナコGPと同様、ストリートコースでのレースだが、抜けないことで有名なモナコとは違い、道幅が広く(狭い区間もあるが)長い直線と低速コーナーが組み合わされたストップ&ゴーのバクーのコースは今のF-1としては異例に抜きやすいコース。今回のレースもオーバーテイクが繰り返された上に、予想外の波乱に満ちたレースとなった。

来年からはF-1でグラウンドエフェクトカーが復活し、乱流の発生を抑えることによって後続車に当たる空気流をよりクリーンにすることで追い越しを容易にするレギュレーションとなる。
このグラウンドエフェクトに関連して、DAZNの中継で言っていたのを聞いたのだが、「グラウンドエフェクトの聖地?」というようなことを言っていた。どういう意味だろうと調べてみたら、これのことのようだ。



レーシングカーの場合、翼断面形状のシャシー(ただし航空機の翼とは上下逆)を地面すれすれに走らせることによって、強力なダウンフォースを得るのがグラウンドエフェクトカーだが、翼断面形状をひっくり返せば、グラウンドエフェクトを逆の方向、つまり揚力を増大させるという効果が得られる(以前の投稿)。

これを船とも飛行機ともつかない輸送手段に使ったのは、旧ソ連で水中翼船を設計していたエンジニアだ。水中のハイドロフォイルによって船体を水面から浮かせて水の抵抗を減らし、高速化をねらうのが水中翼船だが、水中のハイドロフォイルではキャビテーションが発生して速度に限界がある。そこで空中の水面に近い位置に翼をおくことによってグラウンドエフェクトで増強された揚力を発生させるというアイディアだ。

航空機よりも単純な構造と低コストで、大きな積載量を船よりも高速で運べるというのがメリットだ。特に1966年に最初のフライトを行ったKMとよばれる機体はすごい。離水するまでは8つのジェットエンジンを使う巨大な機体だが、浮いてしまえばわずか2つのジェットエンジンで飛び続けるという。

カスピ海、黒海周辺のこの地域は、中央アジア、中東と接し地政学的に重要な地域だ。
ここでの運用を前提に開発されたため、輸送の効率のみならず、超低空の水面すれすれを走ることによって、レーダーやソナー等で発見されないなど、軍事面のメリットがあったというのも興味深い。

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