干支学では60年で一巡りと言われるが、今から60年前の1959年にはマイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」が発表された。モード手法を完成させた歴史的名盤といわれる。
コード進行の呪縛を逃れた「自由な」インプロヴィゼーションは、集中力を高めてスケールをなぞりながら閃きを待つ緊張感に満ちた、確かにそれまで主流だったバップとは違う空気を持っている。
(後付けの)理屈は置いておいても、できあがったものは、他のどの作品にもない静謐さ。唯一無二の魅力をもっていることは確かだ。
この作品のあとのマイルスコンボは、アヴァンギャルドに突っ走ろうとするハービー、ショーター、ロン、トニーという若手が、マイルスの美意識によって完成度の高いサウンドに仕上げられた60年代の黄金期を迎える。公民権運動に突入したアメリカ社会の激動を反映するかのようなテンションに満ちている。
マイルスはジャズを何度も変えたが、一つひとつのプレイにも、確かにジャズとしてどうとかいったことを超えたものがある。ポジティブといえばポジティブ、リリシズムに満ちていても沈み切らない。
アルバムの冒頭のソー・ホワット。後に再演されるたびにどんどんハイテンポになっていったこの曲だが、この動画はまだカインド・オブ・ブルーのアルバムの雰囲気を残している。
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