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2016年11月8日火曜日

電気自動車とグラウンド・エフェクト

電気自動車をスポーツカー、あるいはレーシングカーとして運動性能を追求する可能性を考える時、一つネックになるのは、グラウンド・エフェクトではないだろうか。

グラウンド・エフェクトとは、車体床面と地面との間の空気流を利用してダウンフォース(車体を地面に押しつける力)を得る手法で、今日のレーシングカーでは不可欠な技術だ。このグラウンド・エフェクトを得るためには、床下の空気の流速を高める必要があり、そのために適切な位置で床下を跳ね上げる設計をすることになる。車の運動性能を高めるために車体の重心を下げるには重量物は最低地上高まで下げたいが、グラウンド・エフェクトの効果を高めるには、そのために最低地上高ぎりぎりになる部分の面積はできるだけ小さくしたい、という葛藤が起こる。ガソリンエンジンのレーシングカーの場合、どうしても最低地上高まで下げたいクランクケースは大きいものではないし、燃料タンクも電気自動車のバッテリーに比べれば圧倒的に容積は小さいから、レギュレーションの縛りさえなければ、かなりの床面積をグラウンド・エフェクトのために最適化できる。

グラウンド・エフェクトを利用したレーシングカー、ポルシェ962Cの床下を後方から見たところ(写真:Wikipediaより)

同じく、リヤカウル内の様子。床下が後方に向かって跳ねあがっているのがわかる。




いっぽう、電気自動車の場合は、それなりの航続距離を実現しようとすると、大量のバッテリーを積む必要がある。バッテリーは重たいので車体の低い位置に積まなければならない。つまり最低地上高まで下げて搭載したいものが大量にあるということが、グラウンド・エフェクトを有効に使うにはネックになる。乗用車の場合は以下のテスラ・モデルSのようにバッテリーを床下に敷きつめれば重心も低くできて問題ないのだが、床下の一部をディフューザー状にスウィープさせようとすると、そこにはバッテリーを置けなくなる。

電気自動車 テスラ・モデルSの外観とシャシー・レイアウト(写真:Wikipediaより)





床下にいっぱいバッテリーが敷きつめられている。このテスラ・モデルSは、特殊なバッテリーではなく汎用のリチウム・イオン・バッテリーを使うことでバッテリーにかかるコストを下げており、その代わりそのバッテリーを大量に積んでいる。

もし、運動性能をより追求するのであれば、充電密度が高く容積を小さくできるバッテリーが欲しいところだ。

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