薪がはじける音が趣を添えている。
先日、伊豆の国市であった狩野川能で見てきたのと同じ演目だ。
浜辺で松の枝に掛かる天女の羽衣を見つけた漁師の白龍に、天女が現われ、「羽衣がないと天に帰れない」と、羽衣を返して欲しいと頼む。天女の舞を見せてくれたら返すという白龍。返してくれたら舞を見せるという天女に、「羽衣を返したら舞いを見せずに帰ってしまうだろう」、と疑い、返そうとしない白龍。
そこで天女は、
「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」と返した。
疑いは人間の世界のもの。この世においては人目につかないところでごまかすことができる。
しかし、「想い」の世界はごまかせない。偽りのない世界。
現代にいたるまで人気のある演目という。明るく華やかな舞いの中にも、奥深い言葉がこめられている。
「天」はごまかせないのだ。
「天網恢恢疎にして漏らさず」という言葉もある。
(意味)天網は目があらいようだが,悪人を漏らさず捕らえる。天道は厳正で悪事をはたらいた者には必ずその報いがある。(コトバンクより)
こちらはクライマックスの10分間だけだが、夕暮れの中、かがり火に彩られた天女の舞は美しい。
同じ演目でもテンポが違ったり、能管の音色や節回しには個性があって面白い。
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