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2013年12月28日土曜日

Persistence Hunt (持久狩猟)-長くゆっくり走ること

クリストファー・マクドゥーガルのベストセラー、Born to Run を英語版で読み続けているが、ようやく終盤にさしかかった。この本には実に数多くの魅力的なランナーや研究者が登場するが、Born to Run(走るために生まれた)とまでいうからには、人類というものの根源に「走る」ということが関わっているということになる。それが、Persistence Hunt (日本語では「持久狩猟」と呼ぶらしい)というものだ。

くわしくは、さまざまな魅力的なエピソードとともにこの本に書かれているが、簡単にまとめるとこういうことらしい。
今の定説からいえば、人類の歴史の中で、農耕・牧畜といった生産手段を獲得したのはごく最近であり、それ以前の狩猟・採集生活の時代の中でも、弓矢という飛び道具を使用した期間はこれまたごく短い。それ以前の圧倒的に長い期間、人はどうやって動物を捕獲できたのか。人間は他の動物に比べてひどく足が遅い生物である。少なくとも短距離走においては。しかし、実はその走り方からもエネルギー効率が良く、足の運びと連動しない呼吸が可能である。いっぽう四足歩行の動物の場合は、全力疾走すると内臓が前後に大きく揺すぶられ、そのリズムと呼吸のリズムは同調させざるを得ない。また、発汗能力が抜群に優れ、体毛がないこともあり、長時間走り続ける際の体温調節が可能である。何らかの容器で水を携帯し、途中で水分補給できることも大きい。
また、瞬発的な力を発揮する速筋よりも持久力にすぐれた遅筋繊維が多く、その身体のつくりからしても持久走向きなのだ。全速力で逃げる獲物はそのうちオーバーヒートして走れなくなり、それを人間は何なく獲得できるという。

この本の主な舞台であるメキシコのタラウマラ族の話ではないが、南アフリカのカラハリ砂漠のハンターの話も出てくる。映像を見つけた。


このハンターの走りはいかにも軽やかで、自然なフォアフット・ストライク(つま先着地)になっている。そして、自然を搾取するのではなく、自然の恵みへの感謝の念に満ちている。

テクノロジーや文明の流れは基本的に不可逆であり、当然のことながら現代の先進国に暮らす私達が持久狩猟に戻る必要はもちろんない。しかし、「長くゆっくり走る」ということが人間のさまざまな能力の中でも根源的なものであるとすれば、それを忘れないこと、あるいは取り戻すことは、人類の文明のあり方を健全にすることにつながるのではないだろうか。

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