決められた通りに演奏された音楽よりは、インプロビゼーション(即興)の要素がある音楽のほうが面白い。さらに複数のプレイヤーによる即興の掛け合いであるインタープレイが、ジャズの醍醐味だと思う。ビル・エヴァンスは、繊細なトーンで美しいハーモニーやメロディを聴かせるピアニストだが、鋭いインタープレイの感覚も大きな魅力だ。
たとえば、ギタリストのジム・ホールとのデュオアルバム「アンダーカレント」、特にその中でも「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は名演として有名だが、それに負けず劣らず素晴らしいインタープレイだと思ったのは、このフルートとのインタープレイだ。
ジム・ホールとの「アンダーカレント」の場合は、常に相手のプレイに対して反応するインタープレイではあっても、今はギターのソロ、ここからはピアノのソロ、という区切りがあるが、そういった明確な区切りがこの演奏にはなく、ピアノとフルートが同時にお互いの音を聴きながらソロを展開している。尺八のようなニュアンスをもったフルートだが、一つひとつの音が選び抜かれた意味のある音となっていて、それに静かだが鮮やかなピアノが応えていく、非常にスリリングな演奏だ。
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