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2016年11月14日月曜日

トランプ当選によって見える、アメリカの人種問題の新たな様相

作家の村上春樹が「日本人にジャズは理解できているんだろうか」という文章を書いていて、「村上春樹 雑文集」に載っている。

この文章は、黒人ジャズ・ミュージシャンのブランフォード・マルサリスが1993年にインタビューで「日本人はジャズというものを理解していない」という意味の発言をしていることに対して書かれた文章だ。

ジャズとか黒人音楽には政治的な側面があり(黒人音楽に限った話ではないが)、そういう側面について日本人はシンパシーをもつことはできていないといえばいえる。しかし、「ジャズという音楽は既に世界の音楽の中で確固とした市民権を得たものだし、それは言うなれば世界市民の財産として機能しているんだ」という村上春樹の視点は大切にしたい。

私は大学生のころからジャズを聴いているので、このブランフォード・マルサリスの言葉には無関心ではいられないし、この文書が書かれた1994年頃には、奇しくも私はアメリカに滞在していたので、それに対する村上春樹の見解は、それなりに理解できるような気はするのだ。

当時のことで憶えているのは、いわゆるO.J.シンプソン裁判で、元妻の殺人の嫌疑をかけられた元フットボール選手のO.J.シンプソンが黒人であったことから、敏腕の弁護士によって人種偏見の問題にすりかえられ、刑事裁判では無罪、民事裁判では有罪となった事件だ。

当時、学校などでも黒人の生徒達は無罪、白時の生徒達は有罪を主張してクラスが二つに分かれた等という話もきいたし、人種問題が存在していることをまざまざと感じさせられた。

今、アメリカではトランプ氏が米大統領になることが決まり、トランプ氏を支持した白人層の、今まで表に出て来なかった意識というものがフォーカスされ、アメリカの人種問題は新たな様相を見せている。
トランプ氏当選に便乗したあからさまなマイノリティへの差別行動も報道されていて、それは本当に憂慮すべきことだが、一方で抑圧された白人層の存在も認識する必要があるのだろう。

今起こっていることは激変ではあっても、逆行ということではないと思う。

そして、これは一応アメリカ国内の問題なのかもしれないけれど、人の動きや情報が否応なくグローバル化している今、日本人にとっても世界中の人々にとっても無関係ではない。


このコラムは参考になります。
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