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2015年1月17日土曜日

フォーミュラE第4戦 電気自動車の激しいバトルとクルマの未来

昨年からはじまった電気自動車のフォーミュラレース、フォーミュラEのアルゼンチンでの第4戦レースを観戦した。マシンは美しい。近年、空力エレメント満載になったF1が失った、クリーンな美しさが感じられる。音はガソリン車のレースに比べると格段に静かだが、コーナーでの身のこなし、縁石をかすめる車の動きはフォーミュラ―カーらしいものだ。また、電気自動車ながらトランスミッションがついており(電気自動車といえども速さとエネルギー効率を追求するにはやはり変速機があったほうがいいらしい)、恐らくガソリン車のフォーミュラと同じドッグクラッチ式のミッションと思われるが、エンジン、ではなくモーターの回転数の変動もガソリン車のレースカーを彷彿させる。

電気自動車においては、バッテリーをどうするか、充電をどうするか、というのが技術的には最大のネックになる。長距離を充電なしで走らせようとするとバッテリーが重くなる。いっぽう充電はガソリンを給油するように素早くはできない。フォーミュラEにおいては、決勝レース中に一回車ごと乗り換える、という方法をとっている。見ていてちょっと不思議な感覚だが、限られたエネルギーでいかに速く走れるか、という技術的な駆け引きについては、近年のF1や、ルマン等のスポーツカーレースでも当たり前になってきている。むしろ、F1等のハイブリッドシステムのほうがエネルギーの流れが複雑で分かりにくく、電気自動車のほうがシンプルで分かりやすいともいえる。

中盤セーフティカーが入っての周回が長く続いたが、これは仕方がない。でもそのぶん電力をセーブできて、終盤はなかなかエキサイティングな全開バトルになった、と思ったらクラッシュの連続。接触するとサスペンションがすぐイってしまうのは、レギュレーションのせいなのだろうか?せっかくバトルは見応えがあるのに、クラッシュが多すぎるのは難点。

大混乱の末、最終的にアムリン・アグリのダ・コスタがラッキーな初優勝。F-1の世界で苦労した鈴木亜久里が率いるチームにとっても初優勝となって良かった。ずいぶん荒れた展開になってしまったが、もう少し洗練されていけば、面白いレースになるんじゃないだろうか。

予選の動画も見たが、見た目の走りは予選がもっとすごい。決勝では電気をもたせるためにセーブした走り方になるのに対し、予選は市販車のようなタイヤで目いっぱい攻めるのでズリズリ滑る。スリックタイヤではなく全天候型のミシュラン、転がり抵抗を減らしながら速く走れるようにという、市販車に応用可能な技術を追求できるようなレギュレーションになっている。

次世代の自動車社会を考える時、電気自動車は重要な一つの要素である。トヨタは燃料電池車の販売に向けて、水素社会の実現に向けての大きな賭けに出ているが、そういったインフラづくりや、規格の面での主導権を取れるかどうか、その戦略が問われるところだ。「ものづくり」が得意な日本人は、性能の優れたモノをつくれても、それをどう使うのか、活かすのかという戦略面で負けてしまうのが、第二次世界大戦以来、重大な弱点である。
それはさておき、電気自動車は最初に書いたとおりバッテリーと充電という技術的なボトルネックがあって、長距離を走るクルマのソリューションとしてはあまり良くない。しかし、ハイブリッドのように複雑でない分、ドライバーの感性に直結したスポーツカーのようなクルマをつくるには、むしろ向いているのではないかとも思う。フォーミュラEが電気自動車の可能性を大きく広げるようなブレイクスルーを起こしてくれることを期待したい。

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