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2024年2月12日月曜日

書評:長州ファイブ サムライたちの倫敦 (桜井俊彰 著)

 幕末の文久3年(1863年)に、藩の命令で密かにイギリスに留学した5人の長州藩士の話。興味深いことの一つは鎖国中の江戸時代であったのにかかわらず洋学に通じる先人が5人それぞれの背景にいたということ。洋行はある意味必然であったのかもしれないが、しかし尊王攘夷の急先鋒であった長州藩からの留学生を受け入れ、膨大な費用を含め支援したイギリスの思惑も非常に興味深い。

 また、若年の彼らに大きな行動の自由を与えた長州藩の不思議さ。これは司馬遼太郎が著書の中で指摘しているこの時期の長州藩の特異性、若者に対して、特に前途有望な若者に対する異様なほどの寛容さによるものだったのではないか。

 イギリスまでの航海においてクリッパー(高速帆船)に乗せられ苦しんだ話は面白い。当時はまだ帆船が現役だった時代だ。有名なクリッパーの「カティーサーク」が進水したのは彼らの出発の数年後の1869年のことである。アメリカから来航したペリーの艦隊も、その4隻のうち蒸気船は2隻だけだった。それでも時代は汽船の時代へと急速に転換しつつあり、メンバーのうちの一人、山尾庸三は、グラスゴーで当時最先端のエンジン製造技術を有したネピア造船所で造船技術を学んだという。






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