即興演奏の魅力に惹かれてかつての私がのめり込んでいったジャズという音楽の成り立ちについて、中村とうよう氏の本「ポピュラー音楽の世紀」には、このように書かれている。
「楽器としてはブラス・バンドからトランペットやトロンボーン、音楽素材としてはラグタイムなどのダンス音楽、そして感覚的にはブルース―。これらの要素がダイナミックな社会変動の中で有機的に結びつき、ジャズという新しい音楽を生み出した。」
即興演奏=アドリブ自体ははるか昔から存在し、現在クラッシックと呼ばれる音楽も、それが作り出された時代には実は即興演奏もされていたぐらいのことらしいが、より次元の高い大胆なアドリブへと飛躍するには、さまざまな異質な音楽的、文化的要素の衝突、さらには時代の転換期のテンションが必要だったということのようだ。
このジャズの成り立ちを考える時、日本でいえば、室町時代初期に生まれた能楽の成り立ちに通じるものがあるのではないかと感じる。南北朝動乱の暗い影の中、生き生きした庶民文化が花開いた時代に、猿楽という大衆芸能を、観阿弥・世阿弥父子が公家・武家好みの高尚な芸術へと大成した。
能楽は武士の教養として存在し続け、現在はユネスコの無形世界文化遺産に登録されていて、現在も興行として成立しているという。ジャズはどうだろうか?もちろんジャズはポピュラー音楽の一つのジャンルとして存在し続けているが、大衆音楽としては難解なものになってしまって、その芸術としての真価を理解できる聴衆は限られているだろうし、演奏者となるにも高度な音楽理論と演奏技術が必要なものになってしまい、そういった意味ではクラッシックに近いものになってしまっている。
即興演奏の面白さが一番ピュアに感じられるのは、ジャズが生まれて間もないこのあたりかもしれない。
ギターを初めてアドリブソロを弾くメロディ楽器として使ったチャーリー・クリスチャンの演奏。
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